予防歯科・PMTC
歯のトラブルを未然に防ぎ、長く健康な歯を維持するためには定期的なケアが大切です。
虫歯や歯周病は、痛みが出てから治療すると大きな負担や時間がかかる場合があります。
そのため当院では、予防歯科の考え方を取り入れ、定期的な検診や専門的なクリーニング(PMTC)を推奨しています。
歯科医院でのケアとご自宅でのセルフケアを組み合わせることで、より効果的にお口の環境を守り続けることができます。
治療優先型から予防優先型へ
日本では「痛くなったら歯科へ行く」という治療優先型の考え方が一般的でした。
そのため、小さなトラブルを放置し、歯を削る治療を繰り返すうちに抜歯へ至ってしまうケースもあります。
欧米では「痛くなくても定期的にメンテナンスへ行き、歯を長持ちさせよう」とする予防優先型が主流です。
定期検診を受ける割合が高く、健康な歯で暮らし続ける人が多い理由の一つです。
日本でも定期検診に行くことが当たり前になる文化を作っていきたいと考えています。
当院の特徴と予防への取り組み
唾液検査を生かした予防プラン
唾液には口腔内の健康状態を反映する多くの情報が含まれています。
当院では唾液検査を実施し、唾液に含まれる成分や菌の種類、緩衝能力(酸を中和する力)などを調べることで、虫歯や歯周病のリスクを客観的に把握しています。

唾液検査の流れ
- 唾液の採取
専用の容器に唾液を数分ほど溜めていただきます。
時間や方法を工夫し、採取しやすくなるよう配慮しています。 - 検査キットで分析
得られた唾液を検査キットにかけ、虫歯菌の多さや唾液の酸を中和する力など、いくつかの項目を評価します。 - 結果のフィードバック
分析結果を踏まえ、患者様に分かりやすく説明します。
例えば、虫歯菌が多い場合はフッ素入りの歯磨き粉を推奨したり、間食のタイミングに注意するよう助言したりします。
歯周病リスクが高ければ歯周ポケットの清掃に重点を置いたケアプランを提案するなど、個別に適した予防策を組み立てます。
リスク別ケアプラン
唾液検査をもとにリスクが高いとわかった方には、3か月や1か月に1回など、やや短い周期でメンテナンスを受けるよう推奨しています。
比較的リスクが低いと判定された方は、6か月に一度など、無理のないスケジュールで定期検診を受ける方法を提案しています。
こうしたデータに基づくケアプランは、効率よくトラブルを回避し、歯を守るうえで大きな効果を発揮すると考えています。
歯科衛生士によるPMTC
PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)は、専門の知識と技術を身につけた歯科衛生士が、歯の表面や歯周ポケットに潜むバイオフィルムや歯石を徹底的に取り除くプロフェッショナルクリーニングです。
普段の歯磨きでは取りきれない汚れを超音波スケーラーやエアフローで落とし、歯の再石灰化を促進しやすい環境を整えます。

PMTCの具体的な手順
- 視診と染め出し
歯垢の染め出し液を使い、歯に残ったプラークの場所を患者様と一緒に確認します。
どの部分が磨き残しやすいかを把握することで、クリーニングの精度を高めます。 - 歯石・バイオフィルムの除去
超音波スケーラーで固い歯石を砕き落とし、エアフローと呼ばれる粉末噴射式の器具でやわらかい汚れや着色を効率的に取り除きます。
磨きにくい歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目まで丁寧にクリーニングします。 - ポリッシング
ポリッシングブラシとペーストを使い、歯面をなめらかに仕上げます。
仕上がり後は歯がツルツルとした質感になり、汚れが再び付着しにくくなります。 - フッ化物塗布・アドバイス
必要に応じてフッ化物を塗布し、歯を強化します。
最後にセルフケアや歯磨きのポイントをお伝えし、普段の生活で続けられるケア方法を一緒に確認します。
メリット
- 虫歯や歯周病のリスク軽減
バイオフィルムや歯石を定期的に取り除くことで、口腔内を清潔に保ち、トラブル発生率を下げます。 - 口臭予防
汚れが溜まっていると、口臭の原因になりやすいです。
PMTCで徹底的に汚れを排除すれば、嫌なにおいも抑えられます。 - 着色の軽減
お茶やコーヒー、タバコなどで付着した表面的な着色は、エアフローなどで落としやすくなります。
定期的にクリーニングを受けると、歯の明るさを維持しやすいです。
唾液検査とPMTCの連携
唾液検査で得た結果をふまえ、虫歯リスクが高い方にはフッ素塗布をより重点的に行ったり、リスクの低い方でもエアフローを使ったクリーニングを組み合わせるなど、個々の状況に合わせてPMTCの内容をカスタマイズしています。
同じ口腔内であっても、年齢や生活環境の変化でリスクは変わるため、定期的に検査を行い、最適な予防策をアップデートすることが重要だと考えています。
予防歯科の重要性
歯のトラブルは、痛みや腫れなどの症状が出てから見つかると、大規模な治療や長い通院期間が必要になることがあります。
そうした負担を回避する手立てとして、「予防歯科に積極的に取り組む」ことが挙げられます。
予防歯科とは、痛みが起こる前の段階で定期検診を受け、問題を早期に発見して最小限の対処を行い、口腔内の健康を持続させる考え方です。
痛みが出る前に対処する
症状が進行しにくい初期段階でのケア
虫歯や歯周病は、初期のうちは自覚症状があまりなく、気づきにくい病気として知られています。
痛みや腫れなどの明確な症状が出てから受診すると、すでに進行度が高く、大掛かりな治療が必要になる場合が多いです。
そのような治療は歯への負担が大きく、抜歯や神経を取る処置が検討されることもあります。
定期的な検診を続けていれば、症状が深刻化する前に軽い処置で解決できる可能性が高まるのです。
時間や経済面での負担軽減
痛みが出てからの治療は、長い治療期間や複数回の通院が必要になることが多いです。
短期間で済むと思っていた治療が、実際には何度も来院しなければならない大きな治療に発展してしまうケースもあります。
定期的にチェックを受ければ、問題が小さいうちに治療が完了しやすく、通院回数や治療費を抑えられる点も大きなメリットです。
全身の健康にも影響
歯周病と全身疾患の関連
歯周病を放置すると、歯ぐきの炎症が進み、血管を通じて細菌や毒素が体のほかの部分に影響を及ぼすリスクが指摘されています。
心疾患や脳卒中、糖尿病などとの関連が報告されており、お口のケアがおろそかになると全身の病状管理に悪影響が出る恐れがあります。
特に糖尿病を抱える方は血糖値のコントロールが乱れやすくなるとの報告もあります。
栄養摂取と生活の質
歯が痛む、あるいは歯の本数が減って噛みにくくなった状況では、食事の選択肢が制限されることがあります。
栄養バランスが崩れれば、体全体の健康維持が難しくなります。
さらに、お口のコンディションが優れないまま日常生活を送ると、会話や咀しゃくへのストレスが増し、生活の質が低下してしまう恐れがあります。
適切なセルフケアとの両立
毎日のブラッシングの見直し

予防歯科を進めるうえで重要なのは、日々のセルフケアと歯科医院でのプロフェッショナルケアを上手に両立させることです。
正しいブラッシング方法やデンタルフロス、歯間ブラシを使ったケアを習慣化するだけで、虫歯や歯周病のリスクを大きく低減できます。
歯科衛生士から定期的にアドバイスを受けることで、自分の癖や磨き残しを見直しながらレベルアップしていけるのが理想です。
磨き残しを減らすための工夫

忙しい日々の中で、歯ブラシが行き届かない箇所が生じることは珍しくありません。
鏡を使って確認したり、染め出し液を使ってプラークを可視化する工夫をするだけでも、大きな改善が期待できます。
歯の表面だけでなく、歯と歯の間や歯ぐきの境目などを意識して丁寧に磨くことが予防の第一歩です。
当院こだわりの機材

超音波スケーラー
振動数や水量を調整しながら作業し、歯に余計なダメージを与えないよう注意を払っています。

エアフロー
痛みを感じにくい方法で、短時間で汚れを落とせるため、患者様の負担が少ないです。

ポリッシングブラシとペースト
歯に光沢が戻り、プラークが付着しにくい状態をつくる工程として重要です。

口腔内カメラ
説明の際に役立ち、モチベーションアップに貢献しています。
よくある質問
Q. PMTCは痛いですか
必要に応じてパウダーの種類を変えたり、圧力を調整するなどの方法を取り、痛みが軽減するよう努めています。
Q. 唾液検査はどのように行いますか
結果から虫歯や歯周病のリスクが推定でき、個別のケアプランを立てる際に参考にします。
Q. PMTCだけで虫歯や歯周病は防げますか
歯科医院での定期クリーニングと自宅での丁寧なブラッシングの両立が不可欠です。

歯を守る生活習慣に定期検診を組み込みましょう
当院では、患者様のライフスタイルやお口の状態を総合的に考慮し、唾液検査やPMTCを活用しながら最適な予防プランを提案しています。
痛みが出てからの治療ではなく、痛みを感じないうちにケアを続けることこそ、歯を長持ちさせる近道だと考えています。
毎日を明るい笑顔で過ごせるよう、定期的な検診とクリーニングを習慣にしてみませんか。