インプラント・自家歯牙移植
歯を失った場合に、噛み心地や見た目の面で以前の状態に近づける方法としてインプラント治療があります。
自分の歯のようにしっかり噛めることが特徴で、ブリッジや入れ歯に比べて隣の歯への負担が少ないと考えられています。
当院では、口腔内スキャナーとCTを活用した入念なシミュレーションを行い、抜歯即時埋入や即時荷重インプラントなどを積極的に取り入れ、できるだけ短い期間で治療を進められるよう心がけています。
静脈内鎮静を併用し、リラックスしながら受けられる環境づくりにも力を入れています。

インプラント治療とは
歯を失った部位の顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法です。
噛む力が直接顎の骨に伝わるため、骨がやせにくくなり、噛み合わせの安定や咀しゃく機能の回復が期待できます。
長期的に考えると、しっかりメンテナンスを行うことで機能を保ちやすく、自分の歯に近い感覚で食事を楽しめる点が魅力です。
当院の特徴
1. CTと口腔内スキャナーによる精密なシミュレーション
インプラント手術を成功させるためには、あごの骨の厚みや神経・血管の走行を正確に把握することが大切です。
当院ではデンタルCTで得られる三次元データと、口腔内スキャナーで取得する歯列情報を組み合わせて、プランニングソフト上で入念なシミュレーションを行います。
あごの骨の状態やかみ合わせを立体的に分析し、サージカルガイドを作製することで、人工歯根(インプラント)を埋め込む深さや角度を適切に設定できます。
こうした工程を経ることで、術中のトラブルを抑え、神経や血管へのリスクを低減しながら安全に手術を進めることを目指しています。

サージカルガイドの利点
サージカルガイドを使うと、術前のシミュレーション通りにドリルを誘導できるため、誤差が少なく、短時間で確実にインプラントを埋め込めます。
予測しづらい骨の凹凸や薄い部位も、事前のデータ解析により把握できるため、むやみに骨を傷つけるリスクが低くなり、術後の腫れや痛みを抑えやすくなります。
患者様にとっても処置のスピードや安心感が向上し、治療への不安を軽減できる方法だと考えています。
2. 抜歯即時埋入と即時荷重を積極的に応用
重度の虫歯や歯周病などで抜歯が必要な歯がある場合、通常は抜歯後に傷口が回復するまで待ってからインプラントを埋め込みます。
当院では、骨の状態や感染リスクを十分に評価し、条件が整っていれば「抜歯即時埋入」を行い、抜いたその日のうちにインプラント体を埋め込むことが可能です。
さらに、仮歯をすぐに装着して噛める状態にする「即時荷重」も併用することで、治療期間を大幅に短縮し、患者様の負担を減らしています。
メリット
- 治療回数と期間の短縮
伝統的な手法に比べて、数か月かかる治癒期間を待たずに進められるため、忙しい方にも適しています。 - 歯列の審美性と機能性を早期に回復
仮歯であっても見た目や食事の面で大きなメリットが得られます。 - 感染リスクが低い
CT分析や血液検査などで慎重に判断しています。
3. 静脈内鎮静でリラックスして受けられる
長時間の手術や手術に対する恐怖心が強い方には、静脈内鎮静をおすすめしています。
静脈から鎮静剤を注入すると、うとうとと眠っているような状態になり、痛みや不安が緩和されます。
手術中の記憶が曖昧になる方も多く、処置後のストレスや疲労感を軽減できるのが特徴です。

安全管理とモニタリング
麻酔科医または麻酔科認定の医師と連携し、血圧や心拍数、呼吸などを常にモニターしながら進めます。
処置中に異変が起きないよう万全の体制で臨み、処置後はしっかり休んでいただき、麻酔が覚めたことを確認してから帰宅していただきます。
患者様の安全を最優先に考え、可能な限り快適な治療を提供することを目指しています。
カムログインプラントシステム
当院では、カムログ社のインプラントシステムを採用しています。
カムログは、世界的に信頼度が高く、精巧に作られた製品を提供しているメーカーです。
骨との結合性が良い形状や、長期的な安定を追求した接合部(コネクション)のデザインが特徴的で、インプラントと骨が一体化しやすいと考えられています。
症例に応じて最適なサイズや種類を選ぶことで、治療後のメンテナンスもしやすく、長く快適に使い続けていただけるよう配慮しています。
カムログ社のメリット
骨との結合を促す形状
インプラント体の表面処理や螺旋(スクリュー)の形状が骨にフィットしやすく、早期に安定する仕組みが採用されています。
骨との接触面積が増えることで、埋入後の固定が得られやすく、術後の回復がスムーズになる傾向が期待できます。
コネクションの安定性
インプラント本体(フィクスチャー)と上部構造をつなぐ部分(アバットメント)の結合部は、外力や噛む力が集中しやすいポイントです。
カムログ社のインプラントは、このコネクション部分の設計が緻密で、ゆるみや破損が起きにくいように工夫されています。
適切にフィットしていれば、長年使用してもがたつきが生じにくいです。
種類とサイズの豊富さ
人それぞれ骨の厚みや高さ、歯並びの条件が異なるため、インプラントに求められる長さや直径も変わってきます。
カムログシステムは多様なラインアップが用意されており、患者様一人ひとりの骨質や咬合状況に合わせて最適なタイプを選べます。
これにより、抜歯即時埋入や即時荷重などの高度な治療計画にも柔軟に対応可能です。
治療の流れ

1. 初診とカウンセリング
歯を失った経緯や、現在の歯周状態、かみ合わせなどをチェックします。
CT撮影を行い、骨の厚みや形、神経の位置を把握し、口腔内スキャナーで歯列データを取得して予備診断を立てます。
治療期間や費用、リスクなどを説明し、納得いただけた場合に治療計画を進めます。
2. プランニングと準備
CTと口腔内スキャナーのデータをもとに、プランニングソフトでシミュレーションを行い、サージカルガイドを作製します。
骨の状態によっては骨移植材料を用いることもあり、治療計画を調整しながら術前の口腔ケアや環境を整備します。
3. インプラント埋入手術
局所麻酔や静脈内鎮静を行い、痛みや不安を抑えた状態で手術を行います。
サージカルガイドを使用することで、狙った位置に正確にドリルを進め、チタン製のインプラント体を埋め込みます。
抜歯即時埋入や即時荷重が可能な症例では、仮歯を装着してその日から噛めるように対応します。
4. 治癒期間とアバットメント装着
インプラント体が骨と結合するまで一定期間(数か月)が必要です。
結合が安定したらアバットメントと呼ばれる連結部品を装着し、被せ物を作製する準備を進めます。
場合によってはエレベーターやマイクロスコープなどを駆使し、周囲組織を丁寧に管理しながら手術部位を保護します。
5. 上部構造の装着とメンテナンス
インプラントの連結部にセラミックなどの上部構造を装着し、噛み合わせの調整を行って完成です。
以降は定期的なメンテナンスを受け、歯周病菌の進行を防いだり噛み合わせをチェックしたりして、インプラントを長持ちさせます。
メリットと注意点
メリット
- 隣の歯を削らずに済むため、自分の歯を守りやすい
- 骨に直接力が加わるため、しっかり噛めて食事が楽しめる
- 見た目も自然で、笑ったときに自信が持ちやすい
- ケアを続ければ長期的に機能を保ちやすい
注意点
- 外科手術を伴うため、他の治療法に比べて費用や治療期間がかかりやすい
- 全身疾患がある方は治療計画を慎重に立てる必要がある
- メンテナンスを怠るとインプラント周囲炎のリスクが高まり、インプラントを失う恐れがある
インプラント・入れ歯・ブリッジの比較
比較項目 | インプラント | 入れ歯 | ブリッジ |
見た目 | 自分の歯に近い自然な見た目。歯ぐきとの境目も調和しやすい。 | 歯ぐきとの境目に段差が出やすく、見た目や厚みに違和感を覚える場合がある。 | 治療する範囲が限定的であれば、比較的自然な見た目に仕上がる。しかし歯ぐきとの段差が生じることがある。 |
噛み心地 | 顎の骨に直接人工歯根を埋め込むため、しっかりとした噛み心地を得やすい。 | 取り外し式なので、動きやすく硬いものを噛むとズレや痛みを感じることがある。 | 自分の歯を支えにするため、入れ歯よりは安定感があるが、天然歯ほどの強度は期待しにくい。 |
隣の歯にかかる負担 | 欠損部のみの治療で完結するので、隣の歯を削らずに済む。 | バネをかける場合、バネがかかる歯に負担が集中することがある。 | ブリッジを固定するために、健全な隣の歯を削り、支えとして使う必要がある。 |
骨の吸収 | 骨に力が伝わりやすく、噛む刺激で顎の骨が衰えにくい。 | 歯ぐきに乗せる形なので、顎の骨に直接的な力が加わらず、骨が徐々に痩せやすい。 | 欠損部には直接力が伝わりづらく、ブリッジの下の骨が痩せてしまう可能性がある。 |
メンテナンス | 歯根部が人工物のため、周囲の歯ぐきの健康維持が重要。定期的なクリーニングとセルフケアで長持ちしやすい。 | 毎回取り外して清掃する必要がある。洗浄不足だと口臭や歯肉の炎症の原因になる。 | ブラッシングやフロスの使い方が難しくなる。支えに使う歯の周囲を念入りに清掃する必要がある。 |
費用 | 外科手術を伴い、材料費も高額になりやすい。保険適用外のため費用が比較的高い傾向にある。 | 保険診療での対応が可能な場合が多く、費用面の負担は抑えやすい。しかし自費の入れ歯は高額になる。 | 保険診療での対応が可能なケースが多いが、素材や設計によって自費になる場合もあり、費用は中程度となることが多い。 |
手術の必要 | 顎の骨に人工歯根を埋め込むため、外科手術が必要。抜歯即時埋入などで回数を減らす方法もある。 | 手術は不要。型取りや調整を繰り返しながら作製する。ただし顎の骨が痩せやすくなる。 | 手術は不要。欠損部の両隣の歯を削る工程があり、支えとなる歯の健康状態を保つ必要がある。 |
使用感 | 天然歯に近い感覚で噛める。硬いものも比較的安心して食べられる。 | 歯ぐきにあたる部分が動きやすいので、違和感を感じやすく、発音にも影響が出る場合がある。 | ブリッジを支える歯に大きな力が加わる。違和感は少ないが、支台歯(支えの歯)が痛みやすいことがある。 |
上記のように、それぞれの治療方法にはメリットとデメリットが存在します。
インプラントは費用が高額で外科手術を伴うものの、しっかり噛めて骨が痩せにくく、隣の歯への負担も最小限に抑えやすい点が特長です。
一方、入れ歯やブリッジには手術を必要とせず、保険診療で行えるケースが多いという利点があるものの、長期的にみると歯ぐきや骨が痩せやすかったり、隣の歯を削るリスクがあるため慎重な選択が求められます。
当院では患者様の希望や口腔内の状態、ライフスタイルなどを総合的に踏まえ、それぞれの特性をわかりやすく説明しながら最適な治療計画をご提案しています。

長く使えるインプラントにするために
インプラントは、埋入して終わりではなく、その後のメンテナンスが非常に重要です。
歯磨きの際は、インプラント周囲の歯ぐきとの境目に汚れが溜まりやすいので、歯科衛生士から適切なブラッシングや歯間清掃を学ぶ必要があります。
定期検診ではレントゲンで骨の吸収状況を確認し、必要ならば噛み合わせの調整などを行います。
こうしたケアを継続することで、インプラントが長持ちし、快適な生活を維持できます。
当院では治療前の相談とシミュレーションをしっかり行い、抜歯即時埋入や即時荷重など、患者様の負担を軽減する方法を取り入れています。
静脈内鎮静により手術時の緊張を和らげ、安心して受けられる環境づくりにも注力しています。
インプラントに興味がある方や、歯を失ってお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。